前の記事で、IoT時代の日本の未来について問題提起したところ、IoT自体に懐疑的な人がいるのだと分かった。「ビッグデータみたいに単なるバズワードで終わる」と言う人すらいた。

でも、ユーザファーストを押し進める各社にとってIoTは大きなチャンスであり、インターネットの歴史を通して見れば決して避けて通れないものだ。

インターネットの変化

かつて、インターネットは室内限定のものだった。 PCが前提だったから、家や職場くらいの利用シーンしか存在しなかった。

でも、今は違う。

スマホの普及によって、外出先でも簡単に扱えるようになった。これによって、どんな状況でもインターネットに触れるようになり、ユーザを取り巻く状況が多様化した。

例えば、配車サービスの「Uber」はその恩恵を最大限に活用した事例だ。 自分の居場所にタクシーを呼べるアプリだが、「自分がどこにいるのか」が重要な意味を持つ。家でしかインターネットを活用できなかったPC時代にはとても受け入れられなかったサービスだ。

日常生活にインターネットがどう融けこむかという点において、今はまさに過渡期なのだと思う。

小型化したコンピュータは身体に近づき、まったく違うものになろうとしている。小型化したコンピュータは身体ばかりではなく、環境にも散りばめられようとしている。
(中略)
インターネットはもっと人の身体的な行為や体験に近づいていく。身体につながってくる。だから、日常すべてがインターネットに飲み込まれる。

(引用 融けるデザイン ハード✕ソフト✕ネット時代の新たな設計論)

価値を探るのは限界がある

スマホ普及によって、ユーザの行動とインターネットが密接にリンクするようになり、「UX」の重要性がより叫ばれるようになった。

「どれだけの価値をユーザに提供できるか」は、サービスが成功するかどうかのキーファクターであり、もはや最重要課題だ。

価値のあるサービスを作ろうと言っても、そもそも価値とは何によってもたらされるのか。
あえて簡潔に定義してみたい。

価値は、 ①サービス特性、②ユーザ特性、③ユーザの状況という3つ変数によって決定づけられる。

だから、仮にまったく同じものを提供する場合であっても、状況が変わるだけで価値が変わってしまう

先に触れたUberも例外ではない。価値は状況に依存する。

  • 「雨が降っているから歩きたくないよ」/「今日は天気がいいから散歩してみようかな」
  • 「仕事で疲れて元気がない…」/「職場で痩せろと言われたし歩いて帰ろう」
  • 「この通り、車が少なくてタクシーがつかまりにくい」/「大通りだからタクシーが簡単に見つかる」
  • 「今日は給料日だから贅沢しちゃおう」/「給料日前だから節約しなきゃ」

前者はUberへの価値を強化するけれど、後者は価値を弱めるものだ。

やがて訪れる「サービスのコンテキスト化」

僕は、サービスがコンテキスト化すると考えている。価値あるものを提供したいからこそ、ユーザの「コンテキスト」を何とか炙りださねばならない。

コンテキストを握れれば、質の高いUXを提供できるようになる。それも、今までにないユーザ体験が提供できる可能性が極めて高い。

しかし、現状ではコンテキストを探るのにも限界がある。
ここで、IoT・ウェアラブルの出番がやってくる。

Apple Watchがなぜ高度なセンサーを搭載しているか。なぜGoogleはnestを買収したのかー。それぞれ、きちんと理由があるということだ。少なくとも、彼らはそういう決断をした。

まとめ

これからの時代においては、コンテキストを察知し、それをいかに利活用するかが鍵になるだろう。サービスの歴史を紐解いて考えると、これはとても自然な流れだと思えないだろうか。

最後に考えをまとめるとこのようになる。

  • IoTやウェアラブルはユーザへの価値をさらに高めるために必要なコンテキストを察知する有効な手段 だ。サービスがサービスである以上、AppleやGoogleといったプレイヤーがその領域を諦めることはない。
  • ユーザの価値に直結するものだからこそ、IoTは一過性のバズワードで終わらない。そして、避けて通れるものでなく、流れを考えると必然だ。

余談:IoTがもたらすもの

いよいよインターネットは液晶のなかだけにとどまらない。場合によっては、余計なインタフェースが必要なくなったり、生活シーンにより馴染むような世界が実現することだろう。

受動性も増す。

例えば、Apple Watchは「操作」に向かない。でも、ユーザに教えることは得意なデバイスだ。コンテキストを理解してくれていれば、ユーザが操作せずとも勝手に教えてくれるようになる。 能動的なインターネットから受動的なものへと、こちらも変化をしているということなのかもしれない。Google Nowといったパーソナルアシスタントも、まさにこの流れだろう。

こういった変化こそ、新しいインターネット時代の方向性なのだと確信している。