久しぶりに実家に帰ると、弟がインターンの候補先を物色していた。彼は一応理系ではあるけど、広く一般的な職種を見ているらしい。通信大手のKや、メーカーSのインターンに応募した、とか言っていた。何をしたいのかと尋ねてみても、そういう大目標は特にないらしく、まさに典型的な就活生なのだと思う。

まぁ彼らは社会に出たことがないわけで、極めて抽象的に企業イメージを持っている。市場の動きや企業の未来を考えてみろ、というほうが酷なのかもしれない。

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この「イメージ」こそが厄介だ。知名度や企業の「格」があることはそれはそれでいいのだけど、世の中の学生が「とりあえず有名なところで」と、キャリア選択することはとても勿体ないように思う。これじゃ、みんな「とりあえず」大企業に行くのは目に見えているじゃないか。事実、そうなっている。

そういう人たちこそ決まって大企業がどれだけベンチャーに投資や買収を行っているのか、またその意図は何なのかを知らない。大企業は強いから大企業なのだ、と妄信的に捉えている。もちろんそんなことはないんだけど…。

これでは、なんとなくで就職した当人が幸せにならないのはもちろん、世のためにもならない。これは由々しき事態だ。

というわけで、このエントリーでは、主に大学生をターゲットにキャリア選択に関する考えを書いていこうと思う。大企業とベンチャー企業の違いを交えながら、「イメージ」に振り回されないキャリア選択をするために適切な知識を提供したい。

ちなみに、僕は大企業とベンチャーとで進路に悩み、最終的にベンチャーに就職して今に至っている。だから必然的に論旨がベンチャーを賛美する方向に行ってしまうのだけど、当人はあくまでも中立的な立場で意見を述べるつもりではある。どんな人の意見であっても、その人が100%正しいということはありえないんだし、そんな感じで割りきって話半分で読んでもらえればと思う。

大企業とベンチャーを適切に比較するための視座

Webの世界において、ベンチャー企業がもたらした功績はとても大きい。Google、Facebook、Amazon…と、例を挙げればきりがないけれど、世界を変えうるサービスを世に生み出した企業の大半がベンチャー企業であった事実は興味深い。人も金もたくさん抱える大企業ができなかったことをなぜ実現できたのか?

要は、大企業とは「先人」なのだと思う。ずっと同じビジネスをしてきて、儲かって今に至る。そこに居すわる。

ただし、環境が変われば状況は一変する。例えば携帯電話業者であれば、通話料でビジネスしていたところに無料通話の波が押し寄せる。実際にLINEが彼らをリプレイスできるかどうかはさておき、環境が変われば同じビジネスを続けられるとは限らない。

「先人」は状況が変わると、「新人」に取って代わられてしまうかもしれない。ITの波が押し寄せると、環境が変わる。その環境で強みを発揮できるプレイヤーが優位に立つ。そうすると、「新人」が「先人」に取って代わるチャンスが訪れる。

今、千載一遇の好機なのは、Webやスマホが世の中に浸透している点だ。こうなると、既存のビジネスが破綻してくる。環境が変われば、新しい環境にあわせたビジネスをやるほうが勝つ。でも、「先人」にとって新しい環境に適応するのはそう簡単なことではない。だからこそ、先人は新人を取り込んだり(買収)、投資したりする。

この流れはPCやスマホの中だけの話ではない。例えば、ジャーナリズムの現場から交通インフラ、スポーツから医療にまでその波は及んでいる。今存在するすべての市場が、◯◯✕ITの掛けあわせでリプレイスされる可能性がある。産業革命レベルの大変革がこれから10年、20年で訪れることになる。この変化は100年に1度あるかどうか、だろう。

だから、大企業とベンチャーを比較するときに適切な視座は、「どちらが先人で、どちらが新人なのか」だ。規模の大小やそのときの華やかさで見ると見誤ってしまう。あのGoogleだって、生まれたばかりのときはこんな華やかではなかったのだから。


1998年当時のGoogleの様子(画像参照元)

ベンチャー企業の実際

時代の流れとして、ベンチャー企業にチャンスが訪れていることに触れた。次は、実際にベンチャー企業で働いたときのメリットとデメリットについて書いていく。

①働きやすさ

ベンチャーは毎日泥臭く深夜まで残業で…というイメージが根強くあるが、これは会社による。というか、大企業だって同じようなものだと思う。ちなみに、うちの会社の場合は10時出勤で19時あがり、みんな遅くとも大体20時には帰るルールだ。

②お金

特にベンチャー企業の場合は会社によってばらつきがあるが、昨今の市場拡大によって大企業と同じかそれ以上の水準を提供する企業が増えてきた印象だ。代わりに、ボーナス制度は期待しないほうがいいかもしれない。

一方で、ストックオプション(新株を特定価格で特別に購入できる権利)や持ち株比率によっては、上場時あるいは買収時とてつもない金額(数億〜数十億)を手にすることができる。

お金がすべてではないとしても、賢く優秀な人がベンチャー企業にチャレンジする背景には、こういう裏事情があることを忘れてはならない。

③組織風土

これも会社によるが、大企業に比べてベンチャーは人数が少ないから、どんな人が在籍しているかによって大きく変動する。また、組織ルールも宙ぶらりんになってしまうことが多く、属人的になりやすい。

もし気の合う人がいるのならとても働きやすいけど、逆なら地獄。このコミュニケーションの質と量によって企業の成果も変わることになる。

④マインド

終身雇用が崩壊しつつあるのはもちろん、勤続年数はどんどん減っていく。特に若い世代の場合、数年スパンで転職を考えるケースも少なくない。よって、考えるべきは「転職するときに潰しが効くか」だ。ということは、「会社」を成長の場として捉え、学ぶ機会を得る必要がある。

だから、最も気をつけなければいけないのは、「有益な学びの機会」をいかに獲得するか、という点になる。会社に入って成長したいなどと言うけれど、それは自分で考え、決定し、行動することではじめて伴うものだ。ひたすらに指示されやらされ我慢の日々で…を続けても、それでは成長できない。それで身につくのは「耐性」だ。何よりも、楽しく仕事をしたほうがいい。そっちのほうが人間として健全じゃないか。

大企業の大半は、こうした機会を獲得するために長い年数が必要になる場合が多い(もちろん、会社による)。30代後半になってようやく権限が…という時間軸になる。個人的には、それまでの15年間が途方もなく長いと感じてしまう。社会人経験4年だけど、15年はやばい。

優れた大企業の場合、こうした機会を仕組みのなかで生みだし、やがて人の成長を業績に反映させる。もし大企業に行くならばそういう会社に入るべきだ。決して歯車にはなってはいけない。

⑤企業の存続性

大企業のほうがストックあるわけだし長続きしやすいのは当然。一方、このご時世キャリアなんて数年単位で捉えるべきだし、それなら存続性は割とどうでもいいのではないか、とも思う。

逆に、何も学習できない企業に入って市場価値を損ない、まともな転職ができず人生詰んでしまうようなリスクこそケアすべきだろう。

ベンチャーにしたって1ヶ月後すぐ潰れるわけではないんだし、もし潰れたとしても優秀な人材ならどの企業でも活躍できる。

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正しい視野で正しいキャリアを

大企業とベンチャーでは、それぞれにメリット・デメリットがあるし、僕の体験をベースに書いているからおかしな部分もあるかと思う。

とにかく重要なのは、企業に対するイメージだけで安易に選ばないことだ。「とりあえず」大企業を選ぶのは、当人はもちろん社会にとっても悪影響にしかならない。

あなたが10年後、何をしているのかを想像してみるのはいい訓練になる。一人ひとりの人生はばらばらだから、本当に自分にあった会社を見つけて欲しい。

また、もし就活で大企業・ベンチャーに対する悩みを持っている方は気軽に連絡してくれればと思う。僕自身、かつて大企業とベンチャーとで悩み、結果ベンチャーを選んだ経緯がある。少しは力になれるような気がする。

twitter: @healthyboy5

一人でも多くの人が輝いて仕事ができますように、と願ってやまない。