この記事は湘南ベルマーレAdventカレンダーの対象エントリです。ベルマーレが話の中心になっていますが、サッカーに限らず幅広く適用可能な考え方だと思うので湘南サポでない方にも読んでほしいです。

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湘南ベルマーレというJリーグのチームがある。2015シーズン、史上はじめてJ1に残留できることができた。それも全18チーム中の一桁順位である。

このまま強豪となれるか、あるいは弱小チームに戻るのか。その瀬戸際の渦中で、チームはさらなる高みを見据えている。眞壁会長いわく「いつまでも弱小チームでいるつもりはない」そうだ。

長いJ2時代のイメージを払拭して、負の歴史を「強くたくましい湘南」で塗りつぶしたいところだ。

人気・知名度には大きな課題

さて、本エントリの主旨はチームの「Webにおける情報発信力」だ。

というのも、チームの勢いとは裏腹に、まだまだ人気・知名度は他クラブに劣るのが現実なのだ。Googleトレンドのグラフを見るとJ2のセレッソに大きく水をあけられている。せっかくチームに勢いがあるのだから、情報発信の面において何かやれることはないのだろうか。

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ちなみに僕は普段、「テクノロジーとメディア発信」の融合に取り組んでいることもあって、とりわけ情報発信については興味がある。

そういった経緯もあり、他クラブの事例を紹介しながら、工夫できる余地を探りたいと思う。

多様な場所・フォーマットに最適なものを

本題に入る前に、 @bellnews12 について触れておきたい。去年のお正月、時間があったのでベルマーレのニュース自動配信botを作った。

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「たかがBot」ではあるけれど、スポーツとリアルタイムメディアであるTwitterはとても相性が良いため、Twitterに適したメディアを作れないかと考えたのがきっかけだった。どういったメディアでも「多様な場所、多様なフォーマットに最適なものを届ける」ことが肝要である。

ではここから、湘南ベルマーレの情報発信を紹介しながら提言を行いたい。

ソーシャルメディアでは画像・動画をフル活用

まずはこれを見て欲しい。ベルマーレのスタメン一覧だ。相手チームの分まで記載されていて親切なように見えなくもないが、結論から言えば「ダメ」な事例だ。

これがマンCだとこうなる。グラフィカルで直感的に分かりやすい

浦和は別のアプローチで、GIF動画を仕込んでいる。ちょうどスタジアム内スクリーンの選手紹介をtwitterに移植したイメージに近い。520RT。

ちなみに @bellnews12 の場合はこう。スタメンのデータをJリーグサイトから読み取り、そのデータを使ってGIF動画をリアルタイムに自動生成・自動投稿している。

問題は投稿がどれだけ多くの人の目に触れるかだ。鍵になるのは、画像や動画をうまく活用することだ。現代のスマホ文化では、テキストなんか読んでもらえないと思ったほうが良い。

画像や動画がリッチだと、その投稿は拡散されやすくなる。画像の有無で比較した場合、どれほど差があるかまとめてみたのが以下の表だ。

アカウントフォロワーRT1フォロワーあたりRT数
浦和レッズ公式1020005200.005
湘南ベルマーレ公式35000690.002
@bellnews2700410.015

フォロワーが違うため単純比較できないとはいえ、ベルマーレのRT数はやや物足りない印象だ。本来、300RTぐらいが適正水準のはずではないだろうか。

ちなみにマンCはソーシャルメディアに力を入れていて、ゴール時やスタッツ、監督のコメントにいたるまでリッチなコンテンツをフル活用している。

ゴール時

スタッツのインフォグラフィク化

監督のコメント引用

ソーシャルメディアでは、潜在層にもリーチできる強みがある。拡散されやすいコンテンツとは何なのかを吟味することで少しでも魅力が世間に伝わればと思う。

公式サイトをソーシャルメディアに最適化しよう

話は変わり、専門的な話ながら「公式サイトの仕様」の話。残念なことに、湘南ベルマーレの公式サイトは「OGP(Open Graph Protocol)」という基本的な規格に対応していない

ユーザがサイトに訪れる手段はほぼ「検索」か「ソーシャルメディア」の2択だが、この「OGP」はtwitterやFacebookといったソーシャルメディア経由の流入を最適化する手段だ。

例を見ると一目瞭然。誰でも一度は触れたことがあると思う。

OGP未設定の場合

OGPに対応している場合

このように、画像やタイトルがサムネイル内に表示されるようになる。これによって記事のクリック率が大きく変動するのは界隈ではもはや「常識」だ。

ベルマーレに限らず、浦和レッズの公式サイトもなかなかに勿体ない。「2015 Jユースカップ決勝 試合結果 優勝」をFacebookに投稿すると、タイトルが「浦和レッズ」となる。これではトップページをシェアしているように見えてしまう。魅力が伝わるかどうかの以前に、実際の内容とは大きなギャップが生じている。

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実は、OGPの設定自体はとても簡単にできる。それにもかかわらず、僕の知るかぎりサッカークラブはじめWebメディアの半数が未対応。もったいないことだ。

公式アプリを有効に活用しよう

最近、湘南ベルマーレが公式アプリをリリースした。ところが、率直に言って、今のままでは作った意味がない。

アプリを開発すること自体はいい取り組みだが、アプリならではの特性を活かせていない。どこかWebサイトをアプリに移植しただけのような印象を持った。これでは、仮にインストールされてもどうせ使われないアプリになってしまう。

ここで参考にしたいのがジュビロ磐田のアプリだ。Jリーグのなかでは先駆け的存在といえる。

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優れているのは、試合速報をはじめ、チームからのお知らせが即座にプッシュ通知で届く点だ。アプリの場合、このプッシュ通知こそが生命線だ。

twitterやFacebookも、ユーザに情報を届けることができる点で共通しているが、あくまでもアプリやサイトを開いている場合でしか訴求できない弱みがある。ところがプッシュ通知の場合、ユーザに半強制的に「届く」ため圧倒的な訴求力を発揮するのだ。Webのトレンドから見ても、時代の流れは「ユーザが見る」ではなく「ユーザに報せる」にシフトしつつある。

これもただのiPhoneアプリと見ればそれまでだが、実際には「ユーザにリアルタイムで情報を通知する貴重なツール」として機能しており、まさに時代にあった取り組みだと言えよう。

関連性を増してゆく「スポーツ」と「ウェブ」

ここまで色々書いてきたが、言いたいことは1つにまとめられる。それは、「多様な場所、多様なフォーマットに最適なものを届けよう」。サッカークラブに限らず、企業や個人も、情報発信する立場なら等しくこのルールが当てはまる。

5年前には、LINEは存在すらしなかったし、スマホがここまでマスに浸透していなかった。ちょっと前まで有料の携帯サイトやメルマガを配信しているチームも、時代の変化に適応しなければならないのが現状だ。

時間の流れは早いもので、昔は新聞・雑誌・ラジオで情報を得ていたのが、ソーシャルメディアやアプリへと変化した。紙からデジタルにどんどん移行していることを考えると、必然的にあらゆる情報発信はITと無関係ではいられない。もちろん、スポーツクラブも例外ではないのだ。

「媒介手段」が変わると、それに適したコンテンツのフォーマットが変化する。そうすると、コンテンツを仕立てる方針自体が揺らぐ。この課題克服には多くの企業・メディアですら手こずっている。
IT化・グローバル化がさらに進むことを踏まえると、この傾向はさらに進むだろう。

ITでスポーツをどう盛り上げられるか、どう利活用するのか。ある意味で、各クラブの広報マンには「ワールドクラス」のリテラシーが求められているのかもしれない。

PS:さ◯えさんには体調崩さない範囲で頑張って欲しいです。何かあったら手伝うから声かけてくれたらいいんですけどね。

参考:ベルマーレの公式SNSファン数

項目ファン数昨年比
Facebookページ13885人+3737人
twitter35128人13894人
line@16397人2222人
アプリ5587DL(iOS:3092 / Android:2495)-